ぬか床では眠れない

不眠症

夜の静寂が、私を容赦なく引きずり起こした。
時計の針は1時を指している。

昨日、最後に送った仕事のメール。
相手はどう思っただろう。
怒っているかもしれない。
呆れられたかもしれない。
それとも、ただ流し見されただけなのか——。

そんな想像の渦に飲み込まれていると、気づけば3時。
いっそ起きてしまおうか。
いや、もう一度眠るべきだ。
そう思って目を閉じるが、眠気は訪れない。

仕方なく、枕元に置いた眠剤を手に取る。
口に含んだ瞬間、何かが引っかかった。
本当にこれを飲むべきだろうか?

思いとどまり、指で取り出す。
舌の上に残るわずかな苦味。
その後味だけが、夜の終わりを知らせるようだった。
苦味をかみしめながら、ようやく少しだけ眠れた。

———

朝がきた。
眠り足りない体を引きずりながら、ぬか床の蓋を開ける。
去年の夏から始めたぬか漬け。
手を入れ、かき混ぜると、ひんやりとしたぬかの感触が心地よい。

誰でも簡単に始められる菌活。
私が選ぶのは、人参とカブ。
しっかりとした歯ごたえと、発酵の酸味がたまらない。

きゅうりと大根は、やはりみずっぽい。
少し物足りなさを感じるときは、昆布を加える。
余分な水分を吸い、旨味を引き出してくれる頼れる存在だ。

毎日、人参を半分、そのままがりがりとかじる。
驚くほど美味しく、それだけでご飯が進む。
でも——。

眠りに効いているかといえば、正直よくわからない。
腸内環境を整えると睡眠に良いと聞くが、
私の夜は相変わらず、眠りと覚醒の間をさまよい続けている。

だから今日は、カブを半分食べてみる。
じゅわっとした甘さが舌の上に広がる。

発酵するぬか床の中で、野菜たちは時間をかけて熟成され、旨味を増していく。
なのに、私の眠りはいつになれば完成するのだろう。
夜ごと繰り返される中途覚醒は、まるで仕上がることのない未完成の漬物のようだ。
時間が解決してくれるのか、それとも私が何かを変えなければならないのか——。

今日もまた、発酵の時間は進む。
私の眠りも、いつかその流れに乗れるのだろうか。

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